「ほうれい線が気になるから」と、その溝だけに集中的にヒアルロン酸を注入する手法は、かつてのスタンダードでした。しかし、現代の美容医療において「溝を埋めて平らにするだけ」の注入には、懸念点があります。
まず、顔の凹凸が失われ、不自然に膨らんだ「ヒアル顔」になりやすいという点です。シワを消すことだけに固執して過剰に注入すると、表情を動かした際に不自然なパンパン感が出てしまうことがあります。
さらに注意すべきは、ヒアルロン酸の重みによって、かえって下垂が進んだように見えるリスクです。そもそも、ほうれい線やマリオネットラインができる主な原因は、顔全体の組織が下垂を起こしていることにあります。この根本的な「土台の崩れ」を放置したまま表面の溝だけを埋めようとしても、注入した製剤の重みが加わり、かえって顔の下半分にボリュームが溜まって老けた印象を与えてしまうケースがあります。
最近のトレンドは、こうした「点」の修正ではなく、顔全体の構造を再構築する「リフトアップ」としての注入法へとシフトしています。
「MDコード(Medical Codes)」という注入法は、ブラジルのマウリシオ・デ・マイオ医師によって提唱された手法で、顔全体の構造を解剖学的に分析し、あらかじめ設定した特定のポイントに注入する方法です。
具体的には、顔を複数のエリアに分け、それぞれの部位に適した注入量・深さ・角度を選択することで、リフトアップやボリュームの改善を目指します。
気になる部位(点)だけを埋めるのではなく、こめかみや顎、頬の外側など、顔全体を複合的にデザインしながらアプローチするのが特徴です。これにより、顔全体のバランスが整い、自然な若々しい印象へと導きやすくなります。
この注入法の鍵となるのが、顔の皮膚や脂肪を骨に固定している”リガメント(支持靭帯)”です。リガメントは細いひも状で、骨・筋肉・脂肪・皮膚を支える柱のような役割を果たしています。
加齢とともにリガメントの支持力が衰えてくると、支えを失った皮膚やSMAS(筋膜)は重力に負けて下垂してきます。このリガメントの下に支柱を作るようにヒアルロン酸を注入することで、緩んだ靭帯を持ち上げることを目指します。
まるで「杭」を打って柱を補強するように、リガメントの根元にヒアルロン酸製剤を補う。このアプローチによって、緩んだ組織がピンと張り直し、顔全体が自然な位置へと引き上げられるメカニズムです。

引⽤元:表参道レジュバメディカルクリニック(https://rejuva.jp/women/ligament-lift)
リフトアップの支点となるポイントへヒアルロン酸を的確に注入することで、ほうれい線などの溝に直接大量の製剤を流し込む必要がなくなります。その結果、少ない注入量でも若々しい印象を目指すことができます。
過剰な注入を避けることで、笑ったり話したりと表情を動かした際も違和感が少なく、「いかにも整形した」という印象を与えにくい自然な仕上がりが期待できます。
加齢とともに顔の重心は下がり、輪郭は四角形やU字型へと変化しがちです。全顔注入のアプローチでは、こめかみや頬の外側に適度なボリュームを補うことで、下垂によってぼやけてしまったフェイスラインを整えます。
頬の位置が高く、顎先に向かってシュッと引き締まったハートシェイプ(Vライン)を目指すことで、顔全体のシルエットのバランスを整えます。
「以前より顔が長くなった気がする」という悩みは、加齢による皮膚のたるみや骨格の後退が原因の一つです。ほうれい線が深くなると顔の下方向に影が強調され、視覚的に中顔面(目の下から口元までの距離)が長く見えてしまいます。
注入によって頬の位置が高くなると、顔の重心が上がり「中顔面」が短く見えるようになります。この視覚的な効果は、近年のトレンドである「小顔見せ」や「垢抜け感」につながるアプローチです。
ヒアルロン酸治療は「シワがあるからそこを埋める」というパーツごとの発想から、「なぜシワができたのか?」という顔全体の構造(原因)から解決を目指す考え方へとシフトしています。
MDコード注入法は、リガメント(支持靭帯)の下にヒアルロン酸を補うことで、加齢により下垂した皮膚やSMAS(筋膜)を支え直すアプローチです。これにより、注入量を抑えながら自然な仕上がりが期待でき、頬の位置が高く、顎のラインが引き締まった「ハートシェイプ」の輪郭へと導きます。
「最近、顔全体が下がってきた気がする」「特定のシワだけでなく、顔全体のバランスを整えたい」という方こそ、全顔リフトアップのアプローチが向いています。土台から再構築することで、不自然な「ヒアル顔」を避けつつ、健やかな若々しい印象を目指せるのがこの治療のメリットです。
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